コラム:巨大市場アフリカで既に首位、中国携帯メーカーの星
Robyn Mak
[香港 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の深セン傳音腔股(トランジッション・ホールディングス)は無名の携帯電話メーカーだが、地上最後の巨大市場とされるアフリカでは圧倒的なシェアを持つ。
習近平国家主席が提唱する現代版シルクロード構想「一帯一路」との相性は抜群で、これまでに上海証券取引所のハイテク新興企業向け市場「科創板」に新規株式公開(IPO)を申請した企業の中でも傑出している。中国の大手スマートフォンメーカー、小米(シャオミ)<1810.HK>(時価総額400億ドル)との共通点も目立ち、わくわくさせるような材料が盛りだくさんだ。
深セン傳音はスマホメーカー最大手の韓国サムスン電子<005930.KS>(時価総額2720億ドル)や、中国の同業の華為技術(ファーウェイ)や小米などを打ち負かし、アフリカの携帯電話市場でいつの間にか首位の座を手に入れた。価格10ドルほどの初心者向けモデルで知られ、調査会社IDCによると昨年は販売台数2億1500万台のアフリカ市場で半分近いシェアを握った。
アフリカの携帯電話市場は非常に大きい。通話やテキストメッセージの送信など機能が基本的なものに限られたフィーチャーフォン(従来型携帯電話)がまだ幅を利かせているが、所得の増加を受けてスマホに乗り換える消費者が増えており、市場は変化しつつある。業界団体のGSMAによると、サハラ以南のアフリカ諸国ではスマホの普及率が2025年までに現在の2倍の67%に高まる見通し。
深セン傳音が早々とアフリカで成功を収めたことは中国政府の関心を引くだろう。政府は一帯一路構想の一環としてアフリカ諸国との関係強化を目指している。習近平国家主席は昨年、アフリカ諸国に600億ドルを拠出する方針を明らかにしたが、深セン傳音は昨年の売上高の4分3余りをアフリカが占めた。同社はエチオピアに製造工場を持ち、ナイジェリアとケニアには研究開発拠点も保有している。
今のところ深セン傳音はまだ、携帯電話メーカーの稼ぎ頭である、利益率の高い製品で品ぞろえを欠いている。昨年は世界の携帯電話の売上高が小米を上回ったが、純利益率は3%と小米の半分以下にとどまった。深セン傳音はソフトや機器、インターネットサービスに力を入れているため、小米との利益率の差は縮まるかもしれない。例えば、深セン傳音の音楽ストリーミング用アプリのブームプレーはアクティブユーザー数が4300万人に上り、既にアフリカで利用者数が最大だ。
深セン傳音は、2018年の利益に基づく株価収益率(PER)が小米並みだと仮定すると、時価総額は20億ドル程度となる。成長の余地は大きく、科創板でのIPOで順風満帆となりそうだ。
●背景となるニュース
・中国の深セン傳音腔股(トランジッション・ホールディングス)は3月29日、上海証券取引所のハイテク新興企業向け市場「科創板」での新規株式公開(IPO)を申請した。調達額は30億元(4億4700万ドル)を見込んでいる。
・目論見書に盛り込まれた調査会社IDCのデータによると、深セン傳音はフィーチャーフォン(従来型携帯電話)とスマートフォンを含めた携帯電話で世界第4位のメーカー。「テクノ」など3つのブランドを展開し、昨年はアフリカ市場でのシェアが48.7%で首位だった。2018年決算の売上高は前年比13%増の226億元(34億ドル)。
・上海証取から科創板上場の承認を待っている企業は4月15日までに72社となった。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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