日医ニュース
日医ニュース目次 第1295号(平成27年8月20日)

平成27年度都道府県医師会税制担当理事連絡協議会
消費税10%引き上げ時への対応等について意見交換

平成27年度都道府県医師会税制担当理事連絡協議会/消費税10%引き上げ時への対応等について意見交換(写真) 平成27年度都道府県医師会税制担当理事連絡協議会が7月16日,日医会館小講堂で開催された.
 今村定臣常任理事の司会で開会.冒頭,あいさつに立った横倉義武会長は,昨年末に与党が決定した「平成27年度税制改正大綱」について,従来に比べて大変踏み込んだ内容となったことを評価.大綱に書かれた「見える化」に取り組むため,財務省主税局及び厚生労働省保険局・医政局の審議官や課長が委員として参加する「医療機関等の消費税問題に関する検討会」を日医会内に設置し,検討を重ねているとした.
 協議「消費税率10%引き上げ時への対応」では,まず,宇波弘貴財務省主計局主計官から,国家予算を編成する立場から,今後,仮に税制上の解決を図っていく場合に,予算面で何が起きるのかについて説明が行われた.
 宇波主計官は,「国及び社会保障制度の財政の状況」について説明した上で,「設備投資などの課税経費率が大きい病院から,仕入れにかかる消費税分への補てん不足の指摘があるが,総額においては適正な規模の補てん財源を確保したと考えている.追加的な財源を充てる考えはないが,それぞれの医療機関の実際の課税仕入れに対応した配分が行われることが望ましい」と述べた.
 その上で,仮に社会保険診療が課税化された場合,課税仕入れに係る消費税の実額が税額控除され,補てん不足の問題がなくなる一方,消費税を適正に転嫁する観点から,診療報酬あるいは薬価に含まれている課税仕入れに係る消費税対応分についてはこれを是正する必要があるとした.
 更に,「消費税10%引き上げ時」に課税化を行う場合には,税抜き価格に戻す観点から,税率8%に対応した仕入れ税額相当分の診療報酬を減額する必要があり,「消費税10%引き上げ後」に課税化を行う場合には,税率10%に対応した仕入れ税額相当分の診療報酬を減額するのが基本的な考え方だと述べた.最後に,今後どのようなやり方をするにせよ,医療保険の支出のうち消費税に対応した公費負担分は,消費税財源の中から賄われるルールであると解説した.
 続いて,今村常任理事が,「控除対象外消費税問題に関する日本医師会の取組み及び関連する税制上の諸課題」について説明を行った.
 同常任理事は,医療機関の費用構造と医療機関の支払う消費税の対応関係について改めて解説した上で,平成元年の消費税導入時及び平成9年の消費税率5%引き上げ時の本体報酬への上乗せ不足を指摘.平成26年4月の消費税率8%への引き上げにおいては,新たな補てん不足が生じないよう「消費者物価への影響」ではなく「消費税率」引き上げ分を用いるよう日医は主張し,それが受け入れられたことを説明した.
 更に,医療機関等の消費税問題を抜本的に解決する際に,医療機関に起こり得るデメリットとして,(1)過去の上乗せ分の「引き下げ」,(2)所得税の概算経費率(四段階制)の見直し,(3)免税事業者,簡易課税事業者への影響,(4)事業税非課税の見直し─の4点を挙げた.
 また,本年3月以降,月に1回のペースで開催されている「医療機関等の消費税問題に関する検討会」では,「見える化」への取り組みとして,各診療報酬点数項目の原価に含まれる課税費用相当分の実態を把握するため,病院,一般診療所,歯科,調剤薬局ごとにパイロット調査を行っていることを報告した.
 質疑応答では,各都道府県医師会より,経済財政諮問会議に対する意見や,消費税率が10%になった際の医療機関の負担に関する質問等が出された.
 最後に,今村聡副会長が,「解決へ向けて,どのような影響が出るかを会員の先生方に理解して頂く必要がある.社会保障を充実するための消費税に係る問題で,医療提供体制に影響が出るようなことだけは絶対に避けなければならない.年末の税制改正大綱決定に向けて,全力を挙げて取り組んでいく」と総括し,閉会した.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.