自民党の石破茂元幹事長は9日、国会内で開いた石破派の会合で、自民党総裁選(9月7日告示、20日投開票予定)への出馬を、今日10日に正式表明すると明らかにした。正式な出馬表明は、石破氏が初めて。自身の派閥20人、竹下派の参院側(21人)などを合わせ、45人前後の国会議員の支持を得る見通しだ。他派閥は「冷や飯生活」回避へ、雪崩を打つように安倍晋三首相支持に流れ、完全アウェーの戦い。得意のディベートと頼みの地方票で巻き返す構えだが、いかに?

 石破氏は自身が率いる「水月会」の会合で、「明日(10日)、総裁選に向けた私の思いを申し上げたい」と述べた。「あまり遅くならない時期」に表明すると話した通り、盆明けの本格始動を見据え、お盆休みの直前に戦闘態勢を整える。石破氏は「党員や国民に憲法や安全保障、経済政策、党運営で、総理総裁たらんとする者がどんな考えでどこが違うか、理解してもらう努力が必要だ」と、強調。得意のディベートを通じ、首相との立場の違いを際立たせたい考えだが、告示後、首相は数日間ロシアへの外遊を予定する。首相の公務で、討論会など選挙日程に影響しないか、石破氏陣営は警戒。首相に先んじた出馬表明も、自身の考えを浸透させる時間を確保したい思いがにじむ。

 それでなくても、アウェーの戦いだ。国会議員票では石破派(20人)のほか、9日に正式に自主投票を決めた竹下派(55人)のうち、参院側(21人)の支持を得る見通しだが、現段階で45人前後。対する首相は、党内7派閥のうち5派閥と竹下派の衆院側(34人)の大部分が支持。態度未定だった石原派も9日、あわてて首相支持を駆け込み決定。党内が雪崩を打つように首相支持に流れるのは、首相が3選の場合、不支持の派閥が人事で干され、「冷や飯生活」となることへの危機感があるためだ。

 石破氏は、報復人事について「パワハラだ」と訴え、「ポストがどうとか、反対したからどうとか自民党としてあるべきではない」と批判。今後は態度未定の無派閥議員、特に前回石破氏に投票した小泉進次郎筆頭副幹事長の取り込みを目指す。今回から議員票と同数になり、前回首相にダブルスコアでリードした地方票の票固めも意識する。

 首相は11日、地元山口県で自民党県連の会合に出席。出馬に言及する可能性もある。首相VS石破氏の一騎打ちが濃厚な総裁選は、告示を待たず幕を開けるかもしれない。

 ◆自民党総裁選 立候補には党所属国会議員20人の推薦が必要。党員・党友の地方票と国会議員票の合計で争われ、過半数を得れば当選となる。地方票の比重を高めるため14年に300票から所属国会議員と同数(現在405票)に変えた。配分も全国の合計得票数に応じたドント方式に改定。過半数に達する候補がいなければ、上位2人で決選投票となる。