ヤマハ楽団指揮者に87歳の作曲家保科さん 脳出血でまひ残る中、6月定演で自作など5曲

 浜松市中区のアクトシティ浜松で6月24日に開かれるヤマハ吹奏楽団の第57回定期演奏会で、87歳の作曲家保科洋さん(兵庫県在住)が客演指揮者を務める。2017年に脳出血で倒れながらも、音楽への情熱から舞台に立ち続ける保科さん。「古祀(こし)」や「復興」といった自らが手がけた作品など5曲のタクトを振る。

定期演奏会を前にヤマハ吹奏楽団を指導する保科さん=浜松市中区のヤマハ本社
定期演奏会を前にヤマハ吹奏楽団を指導する保科さん=浜松市中区のヤマハ本社

 保科さんと同楽団の付き合いは長いが、指揮は初めて。1980年には同楽団から委嘱されて「古祀」を作曲した。40年以上前の作品を、保科さんは「吹奏楽の曲を作ったり、指導したりするようになったきっかけ」と振り返る。
 同じく委嘱作品「復興」は、同楽団50周年の2010年に作曲した。「曲の最後の部分は希望を持って向かっていくというイメージにした」と保科さん。翌年に東日本大震災が発生したこともあり、思い入れの深い曲になっている。
 保科さんは演奏会に向け、浜松市中区のヤマハ本社に定期的に通って楽団を指導する。ホルン担当の野尻竜章さん(59)は「年齢を感じさせず、若々しくエネルギッシュ」と87歳の指揮に感銘を受ける。
 保科さんは17年4月に脳出血で倒れ、現在も左半身にまひが残る。医師からは一生、車いすでの生活を宣告されたが、同年5月に県外の楽団で座りながら舞台復帰を果たすと同年7月にはベートーベンの曲を約1時間立ち続けて指揮した。驚異的な回復に「指揮者は右手で指揮棒を持ち、左手で表現する。今でももどかしさはあるが、夢中になってやっていたことがリハビリのようになったのかな」とほほ笑む。音楽家としての活動に終わりはない。

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