超高層ビル「大手町プレイス」異例ずくめ売却劇 投資家への「身体検査」に透けて見えるジレンマ

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国がフロアの大部分を保有する超高層ビルが売りに出されている。売却価格は国内の不動産としては過去最高額になりそうだ。誰の手に渡るのか。

大手町プレイスは国がデベロッパーのような動きを果たした初めての物件だ(記者撮影)

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開発時から異例ずくめの経緯をたどった日本屈指の高級ビルが、このほど売りに出された。

「大手町プレイス」売却に係る入札――。2月22日、みずほ信託銀行のホームページに一通の文書がひっそりと掲載された。大手町プレイスは2018年に竣工した東京・大手町に立つ超高層ビルだ。ビルのフロアの大部分は現在、国が保有している。

地上35階のウエストタワーおよび同32階のイーストタワーの2棟で構成され、ウエストタワーには日本郵政やNTTコミュニケーションズが、イーストタワーには住友商事などが本社を構えている。

2021年末、財務省は財政制度等審議会で大手町プレイスイーストタワーの政府保有分を売却する方針を示した。みずほ信託銀行は国からビルの管理・運用を委託されている。その入札がいよいよ公告された。

9月にも落札者が決まる見通しで、売却価格は2021年にヒューリックなどが取得した電通本社ビル(汐留A街区不動産、3000億円規模)を上回り、国内の不動産としては過去最高額になる可能性がある。屈指の高級ビルは誰の手に渡るのか。

落札額3000億円超は確実か

大手町プレイスは国有地の開発を国が主導し、テナント入居後に安定稼働させたうえで売却する初めての案件となる。

国有地はこれまで、民間のデベロッパーによる開発を前提とした払い下げが多かった。2001年に行われた東京・六本木の防衛庁本庁檜町庁舎跡地(現在の東京ミッドタウン)の入札では、オフィスと住宅、商業施設、文化施設などを一体で開発することが条件だった。

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