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ショパンのピアノと管弦楽のための全6作品ほかをピリオド楽器(作曲当時の楽器)で聴く2夜の演奏会は、感慨深い機会となった。2曲の協奏曲や藤倉大の新作独奏曲などが取り上げられたが、音量が安定して確保される現代ピアノに慣れた耳には非常に挑発的な響きが満載だ。
当時のピアノは音量が小さく、聴き手が自ら音を「拾い」にいかなければ管弦楽に覆い隠されてしまう。だが、聴き進むうちに耳が慣れ、従来、内容がピアノパートに比べて
ショパンはピアノに配慮すべき場面で管弦楽を積極的に活用し、管弦楽のみの部分でも当時の楽器の技術的限界に挑戦するかのような斬新な書法を試みた。それはスコアを見ればわかるが、ここまでまざまざと実際の音で体験できるとは!
ピアノ独奏は、ユリアンナ・アヴデーエワと2018年のショパン国際ピリオド楽器コンクールの1、2位であるトマシュ・リッテル=写真中央=、川口成彦。指揮者なしの演奏ゆえ、管弦楽をリードすることも求められた3人だが、個性的な語り口でぐいぐい引っ張っていくアヴデーエワ、当時のピアノの軽いタッチを
ピリオド楽器を用いる18世紀オーケストラも特筆すべきサポートを聴かせた。さらに2夜ともに冒頭で演奏されたモーツァルトの交響曲、特に2日目の「ハフナー」交響曲は、リーダーのカティ・デブレツェニの手腕もあって見事な出来栄えだった。
ピリオド・ピアノの調達・調整(特性の異なる2台が日替わりで用いられた)や会場における音響バランスの調整など、多くの問題をクリアした上で、演奏会が成り立っていたことも特筆される。(音楽評論家・安田和信)
――11、12日、初台・東京オペラシティコンサートホール。