【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#560】水上を運行するボートや航海する客船などを襲う巨大な水生UMAは、乗組員の生命を奪う圧倒的脅威として、伝承などでも多く語られている。そんな中で、極めて異質ともいえる存在によって襲撃されたという出来事があるという。

 アラスカ州ノーメ発、ベーリング海峡を航行中であった客船「アント・ビー号」が、謎の襲撃を受けて沈没した。この沈没事件は、航海士シド・ロドリゴという唯一の生存者の証言によって明らかになり、その恐ろしいてん末が語られることとなった。

 当時、ロドリゴは見張りとして乗船していた。他の乗客たちが船上で優雅に過ごす中、デッキで釣りをしていた人々がとあることに気が付いた。先ほどまで何匹もの大物を釣り上げていたというのに、突然1匹も釣れなくなってしまったのだ。

 みんなが不思議に思っていると、ある乗客が岩だらけの海岸線で何かを発見した。ふと、彼が指さした方向に人々が目を向けると、そこには打ち上げられたクジラの死骸があった。だが、この時はクジラが潜水艦のスクリューにでも巻き込まれてしまったのだろうと考えられており、環境庁に通報はなされたものの航行はそのまま続けられた。

 午前3時ごろ、霧が立ち込めると同時にドタドタという大きな音が鳴り響いた。その同じころ、客船のそばに氷山らしきものがあるのをソナーが感知したため、客船は航路を変更しようとしたのだが、なんとその氷の塊が80ノットを超えるスピードで船に近づいてきたのだ。ロドリゴの同僚は、アリューシャン列島の先住民族に伝わる海の悪魔「ウトゥティ」かもしれないと冗談めかしてつぶやいたという。

 ロドリゴが暗視双眼鏡で確認しようとすると、霧の中から耳をつんざく轟音が鳴り響き、クマのような巨大な存在が現れた。それは水面からそびえ立つ50フィート(15メートル)もの巨大なホッキョクグマの姿をしており、鼻先がとがり、背中には大きなヒレがある、まるでカジキが合体されたような姿であったという。

 警報が鳴り、他の船員たちがその巨大な存在に向けて一斉射撃を浴びせるも効果はなく、怪物はそのとがった鼻先で客船を一突きし、船を左右に揺らしたことで、乗客や船員たちは海に飲み込まれて、客船はとうとう沈没していった。

 怪物が姿を消した後、他の船員もろとも海へ投げ出されたロドリゴは、浮かぶがれきにつかまり、明け方に通りかかったUEA(米国機構)の船に保護された。

 事件後、ロドリゴの証言から検証を試みた動物学者サミュエル・ブラクソン教授によると、その怪物は、何千年もの間、氷河の中で冬眠していた先史時代の生物である可能性が高く、温暖化の影響で氷が溶けたために解放されたのではないかというのだ。後の調査によると、この事件のあった場所の付近では、海洋生物の死骸が多く発見されていたという。

 体験話としては、あまりにも出来すぎではないかとお思いだろう。実はこの事件と怪物は、超常現象などに関したフィクション記事を多く取り扱うことで有名なタブロイド紙「ウィークリー・ワールド・ニューズ」で発信された創作である。

 その記事では、あまりにもお粗末な怪物のコラージュ写真がモノクロながらも記事を飾る。ホッキョクグマとカジキをハイブリッドさせた怪物、という意外でしかない組み合わせには、なんとも言えないおかしさがある。

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