見出し画像

大阪フィルハーモニー交響楽団 第47回岐阜定期演奏会

■2024年3月16日(土) 開演 17:30 / 開場 16:50
岐阜:サラマンカホール

Artist
ロベルト・フォレス・ベセス(指揮)
角野隼斗(ピアノ)
大阪フィルハーモニー交響楽団

Program
モーツァルト:交響曲第32番 ト長調 K.318
ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第2番 ヘ長調 作品102
ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93

はじめに

行ってきました、サラマンカホール!
岐阜へは今回が初上陸だったこともあり、到着してから開場時間まで岐阜城に行って観光も満喫。
地元の食事も堪能。
岐阜のご飯美味しすぎ……!

それについてここに書くと、コンサートについての話に行き着くまでのボリュームがとんでもないことになりそうなので(笑)、もし、奇特にもご興味がある方はX(旧Twitter)のリンクからどうぞ。

今回の感想noteを書く前に、終演直後、余韻に浸りながらの呟きも、リンクを貼っておきます。

プレトーク

開演の20分前から、音楽評論家の奥田佳道さんによるプレトークがありました。
(※記憶が曖昧な箇所が多数あります。あくまで参考程度にお読み下さい)

「プログラムの文章を書いた人です」と口火を切られた所からトークが始まりましたが、茶目っ気のある口振りに親しみを感じて、面白い方かもと気持ち前のめりになりつつ、ワクワクしながら耳を傾けたのですが、この勘は的中しました。

「実は角野さんのコンサートにはよく足を運んでいまして……」と述べられて、マメに追いかけていないと知らないであろう角野さんの最新情報をまとめたトーク(!)を披露。

「この方、ガチのファンだ……!」と何だか嬉しくなりました。

急拵えのソリスト紹介トークだと、ホームページのプロフィールをそのまま読み上げるような形になりがちですが、Sony Classicalとワールドワイド契約を締結したことや、マリン・オルソップさんとこれからショパンの2番をアメリカで初めて演奏する予定がある話など、まさに今旬な話をマシンガンのようにつらつらとお話される奥田さんに、めちゃくちゃ親近感が湧きまくる、湧きまくる(笑)。

「今日来られている皆さんは、7月14日、彼の二十代最後の誕生日に行われる武道館公演のチケット、もちろんゲットされてますよね?」
なんてトークで笑いを取ってみたり。
さらっと当たり前のように誕生日を誦じて、年齢を把握している辺り、もう絶対ファンでしょうと思わずにはいられない(笑)。

「先程、角野さんに秋に出すCDには何の曲を入れるか訊いてみたんですが、にっこり笑って、『オリジナル曲も入れようと思っています…………まあ、その位にしておきましょうか』とおっしゃっていました(笑)」

そんなソリスト紹介を繰り広げた後、プログラムの解説へ。

・今回はプログラムの前半がト長調、後半がヘ長調と調を揃えた構成にしている。

・モーツァルトの交響曲第32番、交響曲と銘打ってはいるものの、本人がそう名付けたわけではなく、演奏時間は10分にも満たない曲。
楽章間の切れ目なく演奏される。
オペラの序曲にも使われたことがある。

・ラヴェルのピアノ協奏曲にはジャズの影響も。
ガーシュウィンとの関係性を取り上げ、ちょっと盛られたエピソードだと述べた上で、あの有名なガーシュウィンの弟子入り志願をラヴェルが断ったエピソードを紹介。
ラヴェルがガーシュウィンに「君はいくら稼いでいるんだい」と訊いて、その額をガーシュウィンが答えると、「君は一流のガーシュウィンなのに、二流のラヴェルになりたいのか」と言ったとか。
何はともあれ、そんな話がある程なので、ラヴェルがガーシュウィンから受けた影響もあるだろうとのこと。

・ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲について、「概要はプログラムを読んで下さい(笑)」と述べた後、彼が息子に書いた曲でもあり、そのためか、ハノンのフレーズが出てくることや、緩徐楽章が特に素晴らしく、ロシアで最も美しい楽章だと紹介。

・ベートーヴェンの8番は、交響曲の中でベートーヴェンが特にお気に入りの曲で、随所に色んな仕掛けがあるのを楽しんで聴いてみてほしい、とのこと。

そんなトークの途中、ベルの音がなり、奥田さんが「あっ」と言う顔をして、笑いを取られたりする場面も(笑)。
穏やかな語り口の中に、時折剽軽な一面を見せられる方で、とっても楽しいひと時でした。

また是非ともプログラムの解説文とプレトーク、お願いします!

モーツァルト

冒頭、指揮者のロベルトさんが腕を振った後、大阪フィルの皆さんから、きゅるんとした可愛い、いきの良い音色が飛び出して、胸を鷲掴みにされました。

何だこれ、配信音楽で予習していたのと全然視聴感が違う……!

生き生きした音色と言えば、角野さんから日頃よく感じているもので、「あ、ロベルトさんとオケと角野さんの相性良さそう!」と直感。
後にそれが当たっていたと実感しました。

ラヴェル

第一楽章。ラヴェルはもしかして、楽器それぞれを命の宿った動物に見立てて作曲したのかなと妄想してしまう程に、各楽器がわいわいと戯れ、音色が生き物みたいホールを駆け巡ったように感じました。

第二楽章は、角野さんのピアノが心の深い所に染み入って、感受性の扉をそっと開きます。
演奏を聴きながら内観をしているような感覚に陥りました。

音の粒は触れるとふわりと溶ける粉雪のような輪郭だけど、感触は温かくて、白銀の月の下、湖を眺めているような、そんなイメージ。

音色から温かさを感じるのは、奏でる角野さんのお人柄にもあるのでしょうか。
木の温もりあふれるホールがそれを素敵に響かせます。

途中からオケの音が入って、ピアノの音色と溶け合うと、切ない音色に胸をギュッと掴まれました。
浮かぶイメージは夜ですが、演奏から受けた感覚だけを喩えて言葉にするなら、夕陽を眺めて黄昏る時のそれに近いかもしれません。

聴く人によって色んなものが浮かびそうな、不思議な魅力を持つ演奏でした。

第三楽章はビートの効いた低音がピアノもオケもめちゃくちゃ格好良く、その上で奏でられるメロディが踊っているみたいで、楽器達の生命の讃歌を味わったような感じを受けました。
楽しかった〜!

ショスタコーヴィチ

私は子供の頃、いつも色んな空想をして遊んでいたので、よく周囲から「どこ見てるの」と心配される子だったのですが(笑)、その当時の私の心の中を音にしたらこんな世界かも、と思うような、親和性を感じる演奏でした。

くるみ割り人形の雰囲気に陽の成分をちょい足しした感じ。

角野さんの演奏から感じるワクワク感と相性良し! な演奏で、人形達がわいわいしている、何だか楽しくてメルヘンな世界観が浮かびます。

第二楽章。
プレトークでもお話があったあの部分。

「音が、音が美しすぎる……!」

角野さんの奏でる一音一音のの美しさに惚れ惚れしながら聴き入りました。
夢のようなとはまさにこの事。
切ないけど優しくて、温かい。

言葉でなかなか上手く言い表せませんが、個人的には角野さんのコンチェルト、ラフマニノフ2番、ショパン1番の第二楽章を初めて聴いた時に匹敵するような衝撃を受けました。

また、ラヴェルの第二楽章でも感じた、生演奏を五感で味わっている状況にありながらも、内観している感覚に、ここでも陥りました。

思い出すのは、やはり子供の頃。
夜、何かを夢見てベッドで眠っていた感覚が蘇って来ます。
幼少期の純粋な心が呼び覚まされるような、そんなひと時でした。

第三楽章。
夢現に見る幻か、命の宿ったオモチャ達や妖精が楽しげにホール内を闊歩している様がありありと目に浮かびます。

角野さん、奏でる音の粒も足元も踊ってるみたいでした。
ロベルトさんも右足を爪先だけ上げてノリノリ、
お髭がチャーミングな最前列のチェロ奏者、近藤さん(気になって終演後にお名前を調べました)も足がリズム刻んでて楽しそう。
この三人に自然と視線が吸い寄せられます。

躍動感たっぷりの演奏がめちゃくちゃ気持ちよかったです!

アンコール

鳴り止まない拍手の中、本日角野さんが選んだ曲はガーシュウィンのスワニー。

親指と人差し指で輪っかを作るポーズをして、「ちょっとだけ弾きます」と指で示した後、高揚感のままに軽やかに弾き始めたかと思えば、中盤にNYの香りが漂うお洒落なカデンツァが!

さりげなく大人の粋な香りを感じさせるような演奏。

「また少し見ない間に進化されてる……!」
と度肝を抜かれました。
格好良すぎだ〜!

クライマックスにショスタコーヴィッチのコンチェルトにあったハノンの旋律をさりげなく入れつつ、盛り上げまくってのラスト!

このライブ感溢れるアンコール演奏も、彼の魅力的な所。
もう最高すぎました!

ベートーヴェン

私は7番と9番は何度か聴いたことがありましたが、8番については本当に無知で、今回が初体験。

事前に配信音源でさらっと予習した時には良さがあまりわからなかったのですが、生演奏は本当に素晴らしかったです……!

冒頭から品の良さを感じるような格調高い響きに聴き入りました。
一瞬、ふわっとバラの香りが漂って来た錯覚がしてみたり。

ロベルトさんの指揮は、自我を強く押し出さずに音楽の中に溶け込んでいるような自然さで、音色が優しくて心地良く耳に響いて来ます。

天国のベートーヴェンの屋敷に一日、招かれたような感覚になった演奏でした。

第一楽章はお屋敷見学、第二楽章はアフタヌーンティーを振る舞われ、第三楽章ではみんなでダンス、第四楽章はディナーを楽しんだ後のコンサート、みたいな視聴感。

第三楽章の途中、前のショスタコでノリノリだったチェロの近藤さんが弦を爪弾くソロパートがあったのですが、とっても素敵で印象に残っています。

この交響曲は、音がとても立体的に聴こえたのも面白かった!

メインのメロディを出すパートが左から、右から、真ん中からとあちこちから鳴ったり、全体から包み込むような音色に聴こえたり。

立体音響技術は現代でも楽しまれているけれど、ベートーヴェンも似た効果を狙って作曲したのかな〜なんて思いながら、聴いていました。

オケの音色も他の曲とは聴こえ方が全然違いました。

これまでは音の粒立ちやイキの良さ、純粋な音色の美しさ、リズム感を堪能した感じでしたが、この曲は最初、遠くの方から響いてくる音がして、そこから何層にも音色が繊細に重なり合って展開される感じ。

美しかった〜!

おわりに
何とか、記憶があるうちに最後まで書ききれました!
先にX(旧Twitter)で呟くと、それで満足してしまってnoteをまとめる気力が湧かない時もあるのですが、やっぱりいつでも読み返せる形で残せて良かったです。

長くなりましたが、ここまで読んで下さった方、ありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?