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Blues in the Night

「ブルース・イン・ザ・ナイト Blues in the Night」1941年にハロルド・アーレン Harold Arlenが作曲し、ジョニー・マーサー Johnny Mercerが作詞したポピュラーソング。映画『ブルース・イン・ザ・ナイト Blues in the Night』で使用され大ヒットした。

ブルースというタイトルがついているティンパンアレーの曲は12小節ブルース進行ではないことが多いが、「ブルース・イン・ザ・ナイト」は12小節ブルース進行がAメロで使用されている。Bメロはティンパンアレー流の8小節の組み合わせによって構成されている。その結果、この曲は58小節の長さになった。

この曲は作曲家でアーレンたちの友人であったアレック・ワイルダーはこの曲にかんして次のように振り返っている。

この曲がヒットしたときに、街のみんなが歌ってたのは「俺のおふくろが言ってた My momma done tol’ me」というこの曲の冒頭のフレーズだったんだ。人々を惹きつけるのには、そのフレーズだったんだ。 (Giogia 2021, p. 70).

たしかにAメロはすごく覚えやすく口ずさみやすく、Bメロはちょっとすぐに思い出せないメロディかもしれない。「俺のおふくろが言ってた My momma done tol’ me」というフレーズも覚えやすい。「ジョニーの家に行って演奏するのが待ちきれなかった」とアーレンは回想している。「彼はあまり反応しない人だから、かなり長い間いじくり回したよ。彼はたくさんのフレーズやセリフを書き留めていたんだけど、どれも冒頭のフレーズにしっくりこないようだった。最初の歌詞は"I'm heavy in my heart, I'm heavy in my heart. "だった。が、ふと書き溜めた歌詞の断片にあった"My momma done tol' me"が目に入りアーレンが「これを一番上に上げたらどうだろう」と提案し、いまのかたちに落ち着いた (Furia & Lasser 2006)。アーレンはこのフレーズを気に入り、曲のタイトルにしようと提案したが結局却下された。この曲を聴いたスタジオの重役たちは感激し、映画のタイトルを『ホット・ノクターン Hot Noccturn』から『ブルース・イン・ザ・ナイト』に変更された。

録音

Cab Calloway and the Palmer Brothers (New York, September 10, 1941)
Cab Calloway (Vocals, Leader); The Palmer Brothers (Vocals); Buster Harding (Arrangement); Dizzy Gillespie (Trumpet); Jonah Jones (Trumpet); Lammar Wright (Trumpet); Hilton Jefferson (Alto Saxophone); Andrew Brown (Alto Saxophone, Baritone Saxophone); Jerry Blake (Clarinet, Alto Saxophone); Chu Berry (Tenor Saxophone); Walter Thomas (Tenor Saxophone); Keg Johnson (Trombone); Quentin Jackson (Trombone); Tyree Glenn (Trombone, Vibraphone); Bennie Payne (Piano); Danny Barker (Guitar); Milt Hinton (Bass); Cozy Cole (Drums)
最高にかっこいいキャブ・キャロウェイの録音。コーラスも演奏も歌も素敵。金字塔。

Big Joe Turner (Los Angeles, January 28, 1942)
Big Joe Turner (Vocal); Unknown (Piano); Unknown (Guitar); Unknown (Bass); Unknown (Backing Vocals)
キャブ・キャロウェイのつぎの年に録音されたビッグ・ジョー・ターナーの録音。かなりブルージーで素敵な録音なんだけど参加しているメンバーがわからなかった。これも素晴らしい。

Little Milton (Chicago, 1965)
Little Milton (Vocal, Guitar); Others Unknown
ブルースやソウルの録音は、とくにこの時期はだれがミュージシャンとして参加したのかわかりにくい。が、リトル・ミルトンのソウルフルなボーカルが聴ける。そういえば高校生のときにソウルミュージックに興味を持ってはじめて買ったのがマーヴィン・ゲイのLet’s Get It Onとリトル・ミルトンのBlues 'N Soulだった。この録音が入っているアルバムは大人になってから聴いたんだけど、ミルトンの声を聴くたびにワクワクした気持ちになる。

Johnnie Taylor (Memphis January 1967)
Andrew Love (Tenor Saxophone ); Floyd Newman (Baritone Saxophone); Booker T. Jones (Keyboards); Isaac Hayes (Keyboards);
Steve Cropper (Guitar); Donald "Duck" Dunn (Bass); Al Jackson, Jr. (Drums);
アトランティックとの契約が終わったあとのスタックスでの録音。ちょっとジェイムズ・ブラウンっぽい歌い方をしているジョニー・テイラーのデビュー作。ジャンプ・ブルース。こうして聴くとジャズ-ブルース–ソウル/R&Bがいかに繋がっているのかがわかる。

参考文献

Gioia, Ted. (2021). The Jazz Standards: A Guide to the Repertoire, 2nd Ed. Oxford: Oxford University Press.

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