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テーマ:Violin/ヴァイオリン
カテゴリ:吹奏楽
開催日:2024.4.29(月)14:00開演
場所 :軽井沢大賀ホール(784名収容) 軽井沢大賀ホール2024春の音楽祭 辻彩奈&阪田知樹デュオ・リサイタルに行ってきました。 プログラム 前半 1.エルガー:愛の挨拶 2.シューマン:3つのロマンス 3.クライスラー:愛の喜び、愛の悲しみ、美しきロスマリン 4.ブラームス/ヨアヒム:ハンガリー舞曲 第1番、第5番 5.ブラームス:F.A.E.ソナタより スケルツォ 後半 6.シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ短調 op.105 7.ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 op.108 アンコール 8.シューマン:小さな子供と大きな子供のための12の連弾小品 夕べの歌 Op.85-12 レポート 愛の挨拶 ソロやデュオのリサイタルでオープニングに演奏されることが多い楽曲ですが、改めて曲目解説を読むと近代イギリス音楽の父エドワード・エルガーが威風堂々とともにポピュラリティを得ている1曲でオリジナルは、1888年に8歳年上の妻キャロラインとの婚約を記念して彼女に贈ったピアノ用の小品で愛情のこもった優しく温かな音楽とのことです。ちょうど私自身もいまこの曲をアンサンブルで手掛けていることもあり、お二人がどのようにこの曲を演奏するのか勉強させていただこうという気持ちで楽しませていただきました。 3つのロマンス 曲目解説によれば、もともとはオーボエのために書かれた曲で温和にたゆたう「速くなく」、チャーミングな歌が流れる「素朴に、心より」、ラプソディ風の「速くなく」の3曲がセットになった曲とのことですが、この曲はこれまでに何人もの音楽家の方の演奏を聴く機会があり、特に昨年はオーボエによる本家本元の演奏も聴けたので、そういった意味では聴くに際してもたくさんの引き出しがある状態といえ、お二人がどのようにこの名曲を表現するのかをより深く楽しむことができました。 愛の喜び、愛の悲しみ、美しきロスマリン 曲目解説によれば3曲とも1910年出版の「古典的手稿集」に収められた楽曲とのことですが、クライスラーのよく知られた3作品であり、私の印象とすれば一番好きなのが愛の喜びで底抜けに明るくこれぞヴァイオリン!という響きがあるように思いますが、演奏される頻度とすれば愛の悲しみが多いのかな?美しきロスマリンは3番目?という印象です。そういった訳で、この3曲を連続で聴けるというのは、ちょっと贅沢なシチュエーションであり、これまでに聴いてきたいろいろな方の演奏も思い浮かべつつ、じっくりと楽しませていただきました。 ハンガリー舞曲 第1番、第5番 曲目解説によれば、ハンガリー舞曲はブラームスが1869年と1880年に出版して大ヒットしたピアノ連弾曲集であり、ブラームスが若い頃にハンガリー出身のヴァイオリニストやロマの楽団から吸収したハンガリーの民族的な音楽をブラームス流にリメイクしたものとあり、なるほどと思うところがありました。5番は特に有名ですが、これまで聴く機会が少なかった1番もなかなか味があって良いなと感じました。 F.A.E.ソナタより スケルツォ 曲目解説によれば、名ヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムが1853年にシューマン宅を訪問した際にプレゼントされた曲で、ディートリヒ、シューマン、ブラームスの合作によるものとのことですが、その中でもブラームスの第3楽章スケルツォが突出して演奏機会が多いとのことで、私もこれまで何度かこの曲を耳にしたことがあり、その力強さを魅力に感じていた節がありました。余談ながらこの曲の特徴である「タタタ・ター」のリズムですが、聴くたびにヒナステラのエスタンシアを連想してしまいます。あくまで私の見解ではありますが、こういったリズムは労働を連想させるものがあり、人々がもくもくと働いている姿を想像するところです。 ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ短調 op.105 曲目解説によれば、シューマンが残したヴァイオリン・ソナタは、いずれも創作活動の終盤に書かれ、第1番は簡潔な構成と書法の中に力強さやロマン性を湛えた作品とのことですが、冒頭からしっかりと主張する濃密な音楽が聴く者をその世界観へと強烈に引き込む印象がありました。 ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 op.108 ブラームスのヴァイオリン・ソナタは、第1番の雨の歌が特に演奏機会が多い印象がありますが、ピアニストの阪田氏より「いずれも異なる世界観を持った作品」とのコメントがあり、さすれば第3番の世界観はいかに?というところでしたが、曲目解説に当時随一のピアニスト、ビューローに献呈する意図と相まってブラームス自身が「名人でなくては弾けない」と述べた程難しいとのことで、そこがこの第3番の演奏頻度が比較的少ない理由かなとも思いました。このあたりはヴァイオリニストが共演するピアニストに演目を告げるとピアニストの都合が急に悪くなって断られてしまう逸話があるリヒャルト・シュトラウスのピアノとヴァイオリンソナタに通づるものがあるのかもしれません。私自身、伊藤文乃氏と高橋多佳子氏による演奏でこの第3番を拝聴したことがあり、その時のお二人の熱量のすさまじさに圧倒された記憶がありましたが、今日の辻氏と阪田氏の演奏も熱量がすさまじく、記憶に残る演奏となりました。 小さな子供と大きな子供のための12の連弾小品 夕べの歌 Op.85-12 アンコールは本プログラムが重かった分、クールダウン的な印象での演奏となりました。タイトルと小さな子供と大きな子供という意味について、5歳くらいと15歳くらいなのかな?と想像しましたが、ある意味人間が成長する過程をひとくくりに子供とするのはいかがなものか?というアンチテーゼをシューマンが表現したかったのか?とも取れるのかなと感じました。 まとめ 辻氏の演奏を初めて聴いたのが、第581回 群響定期演奏会プログラム 上田定期演奏会-2022秋-のサン=サーンス / ヴァイオリン協奏曲 第3番 ロ短調 作品61でしたが、その時にその演奏の見事さに大いに感動し、また機会があれば是非彼女の演奏を聴いてみたいと思っていましたが、約1年半の時を経てその願いが叶えられた形となりました。今回はデュオコンサートということで、よりヴァイオリンの音色がくっきりと感じられた訳ですが、印象とすれば澄み渡ったクリアな音色でとても一人で弾いているようには聞こえない太い音色が全音域に渡って響いており、改めてその素晴らしさを感じた次第です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 2, 2024 06:03:12 AM
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