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レスポンシブルツーリズムを念頭に選ぶ、2024年に訪れたい世界のデスティネーション13

求めているのは日々の喧騒から逃れるリトリート? それとも刺激的な冒険? デュア・リパお気に入りのギリシャの島から新進のデザイン都市まで、2024年にUS版『VOGUE』が注目するバケーションスポットをご紹介。
レスポンシブルツーリズムを念頭に選ぶ、2024年に訪れたい世界のデスティネーション13

2024年はレスポンシブルな旅を。注目のバケーションスポットを厳選

聖アウグスティヌスの名言に、 「世界は1冊の本だ。旅をしない人々は本を1ページしか読んでいないのと一緒だ」というものがある。しかし、ソーシャルメディアが飽和状態にあり、オーバーツーリズムが問題となっている今、インフラに負担がかかるほどまで観光客が押し寄せているヴェネチアへの夏の旅行は、夢のまた夢のようなものだ。

そこで2024年のキーとなるのは、“知る人ぞ知る”場所への旅。ここでは、レスポンシブルツーリズム(責任ある観光)を念頭に入れ、今こそ訪れたいデスティネーションを厳選して紹介しよう。

1. ギリシャ、シフノス島

地中海を望むチャペル。

Photo: Getty Images

去年の夏、マーゴット・ロビーデュア・リパが、キクラデス諸島の一つで人口2,500人ほどの人目につかないシフノス島で休暇を過ごしているところを目撃された。クリスタルのように透き通る海に加えて、その魅力は料理にある。現代ギリシャ料理の創始者とされるシェフのニコス・ツェレメンテスは1878年にここで生まれ、今日まで続く「海と農家から食卓へ」という食文化を発展させた人物。1950年に出版されたツェレメンテスの著書『Greek Cookery』は英語に翻訳された最初のギリシャ料理本であり、地中海料理が世界中に広まるきっかけを作った一冊だ。

島一番のシーフードが食べられることで知られ、ジェフ・ベゾスも常連だというオメガ 3(Ω3 Fish & Wine Bar Sifnos)のほか、バラク・オバマトム・ハンクスが食事を楽しんだというカンティーナ(Cantina)といった美食家を唸らせるレストランは見逃せない。島には空港がないため、船かフェリーで辿り着くことしかできないが、スロートラベルやリラックスしたバカンスを求める人々にとってはまさに理想郷だ。

2.カリブ海、グレナダ

モーン・ルージュ・ビーチ。

Photo: Getty Images

2017年にジェットブルーが直行便を増便してから、「スパイスの島」として知られるグレナダは美味しいラム酒や料理、そして比較的人気の少ない砂浜を備えたカリブ海のリゾートとして徐々に頭角を現し始めた。ひっそりとしていながらも、アクセスしやすいのもポイント。2018年に開業したホテル、シルバーサンズ(Silversands)のほか、今春には自然派ラグジュアリーリゾートの先駆者、シックスセンシズ(Six Senses)によるスパリゾートも上陸予定だ。

ホテルでの滞在以外にも、無限の楽しみがある。にぎやかな首都セントジョージズやボートが点在する港の散策はもちろん、グランドエタン国立公園の熱帯雨林をハイキングしたり、スキューバダイビングで熱帯魚や色とりどりのサンゴ礁を鑑賞するのもいいだろう。また、世界で唯一の水中彫刻公園も訪れたいスポットの一つ。

3.カリフォルニア州、ビッグサー

Photo: Getty Images

ギザギザとした海岸を眺めに、毎年何百万人もの人々がハイウェイ1号線を駆け抜けるほどアメリカで長年人気のドライブ先であるビッグサーだが、話題のブティックホテルのおかげでさらなる滞在時間が必要になるかもしれない。

昨秋再オープンしたラ・プラヤ・ホテル(La Playa Hotel)は完全改装された偉人たちの隠れ家であり、かつての宿泊客にはアンセル・アダムスやスティーブ・ジョブズといった人物たちが名を連ねる。ジョブズがマッキントッシュ初のプロトタイプを披露したのも、このホテルだ。さらにポスト・ランチ・イン(Post Ranch Inn)ヴェンタナ・ビッグサー(Ventana Big Sur)といったリゾートも人々を惹きつけてやまない。

4.モロッコ、タンジェ

Photo: Getty Images

タンジェが誇る豊かな歴史は古代にまで遡るが、テネシー・ウィリアムズからビート・ジェネレーションの詩人、さらにはローリング・ストーンズに至るまで、自由奔放な欧米人たちの間で人気になったのは20世紀初頭のこと。国の独立後も、迷路のようなスーク(市場)で買い物をしたり、アール・ヌーヴォーやアール・デコの建築物を見学したり、近くのビーチで日光浴をしたり、趣のある酒場風のバーで夜を飲み明かしたりする人々がこのカウンターカルチャー精神を楽しんでいる。

しかしこの1年の間に、高級ホテルが2軒も開業。2022年年末にオープンしたフェアモント・タジパレスは、国王の元顧問が所有していた広大なアンダルシア様式の宮殿を改装し、巨大なスパと素晴らしい景観の屋外プールを備える。さらにジャスパー・コンランによるマラケシュのリアド、ロテル(L'Hotel)に続く2軒目のホテル、ヴィラ・マブルーカ(Villa Mabrouka)が数カ月前に進出したばかり。イヴ・サン=ローランの旧邸宅を改装した12室のボヘミアン・ブティックで、ジャック・グランジュのインテリア、広大な庭園、ジブラルタル海峡の絶景が楽しめる。麗らかな日差しを浴びにスタイリッシュなエスケープを求めているなら、タンジェに勝る場所はない。

5.カリブ海、マスティク島

Photo: Getty Images

2002年に亡くなるまで、カリブ海に浮かぶマスティク島はマーガレット王女のお気に入りの避暑地だった。長い間セントバースに裕福で著名な人々が集っていたが、最近はテイストメイカーの多くがビーチクラブではなく、パパラッチのいないのんびりとした人里離れた場所へと流れている。ケイト・モスが50歳の誕生日をここで過ごしたことからもわかるように、クワイエット ラグジュアリーのトレンドが関係しているのかもしれない。その雰囲気を堪能できるスポットがあるとすれば、最低滞在日数は7日間というホテルが1軒のみというこの島しかないだろう。

6.フランス、ビアリッツ

Photo: Getty Images

昨年6月、ペネロペ・クルスを主賓にシャネル(CHANEL)をパートナーに迎えた新しい映画祭「Nouvelles Vagues」がビアリッツで開幕した。フランス南西部のビーチタウンが大きな復活を遂げつつあることを示すかのような出来事だ。AD100のデザイナー、ドロテ・メリクソンによって内装が一新された何世紀もの歴史を誇るレジーナ・エクスペリメンタル・ビアリッツ(Regina Experimental Biarritz)に加え、ル・ガラージュ(Le Garage)のようなクールなブティックホテルもここ数年で続々とオープン。これまでフランス南東部の海岸が華やかなトレンドセッターを惹きつけてきたが、今新たにビアリッツがファッショナブルな地となりつつある。

7.韓国、チェジュ島

ソグィポに位置する城山日出峰(ソンサンイルチュルボン)。

Photo: Getty Images

ソウル市民の避暑地として愛されてきた韓国の南海岸にある済州島は、毎日何時間も水中で貝を採集するヘニョ(「海女」の意)、もしくはロマンティックな韓国ドラマのロケ地として知っている人もいるかもしれない。

そんな島で最高のラグジュアリーホテルとしてこれまで確固たる地位を築いていたのは、南海岸に位置するシーズホテル(Seaes Hotel)だが、最近新たにラグジュアリーホテルの選択肢が増えている。火山の崖の上に建つJWマリオット・ジェジュ・リゾート&スパは、滝から火山のクレーターまで島の自然の驚異を探検し、広々としたスパや露天風呂を楽しみたい人たちにうってつけ。「韓国のハワイ」と呼ばれるこの島は、広大な都市ソウルで数日過ごした後のリトリートに最適だ。

8.トルコ、ボドルム

Photo: Getty Images

次なるイビサの最有力候補として名が挙がるのがトルコのボドルム。何十年もの間アーメットとマイカ・アーティガン夫妻が休暇を過ごしていたこの地で、最近になってラグジュアリーなニュースが相次いでいる。昨夏にボドルム・エディション(Bodrum Edition)がオープンし、1970年代から続くマカキジ(Macakizi )と並んでトルコのエーゲ海側で最もファッショナブルなリゾートのひとつとなった。さらに昨年11月には、同ホテルのレストラン、キッチン(Kitchen)ミシュランの一つ星を獲得している。

そしてこの夏にはミコノス島の有名なビーチクラブ、スコルピオス(Scorpios)が進出する。ここ数年コート・ダジュールやアマルフィ海岸に人が押し寄せているが、次に来る夏のホットスポットはトルコのリビエラになりそうだ。

9.マダガスカル

Photo: Getty Images

世界で最も生物多様性の豊かなマダガスカルこそ、冒険好きな人とエコトラベラーにおすすめ。国内の観光産業はまだ発展途上にあり、旅行上の注意点はあるが、その原野にキャンプサイトが続々と登場する。2024年半ばにオープン予定なのはナモロカ国立公園内のナモロカ・ツィンギー・エクスプロレーション・キャンプ(Namoroka Tsingy Exploration Camp)。さらにプライベートアイランドリゾートのタイム+タイド ミアヴァナ(Time + Tide’s Miavana)ヴォアラ(Voaara)が加わり、ラグジュアリーリトリートへと進化を遂げそうだ。その一方で、高級アドベンチャーツアー・オペレーターのブラック・トマトは、熱帯雨林と人里離れた群島の両方を探検するツアーを組んでいる。海岸沿いの東アフリカの隣国モザンビークもまた、キサワ・サンクチュアリ(Kisawa Sanctuary)や近々開業予定のバンヤンツリー(Banyan Tree)などの宿泊施設を擁し、ワイルドなビーチの保養地として台頭しつつある。

10.セルビア

Photo: Getty Images

ここ10年間のクロアチアを訪れる人は増加しており、ドブロブニクの街やダルマチア海岸のビーチは観光客であふれかえっている。そこで、バルカン半島のさらに遠くへ足を伸ばし、クロアチアでのバカンスに劣らない近隣国の魅力を発見するのもいいだろう。モンテネグロはアマンやワン&オンリー(One&Only)の超高級リゾートを擁すまでになったが、現在新たに注目されているのがセルビアだ。

広大な内陸国のためビーチはないが、首都のベオグラードはあらゆるジャンルの若いクリエーターを惹きつける新進気鋭の観光地であるだけでなく、ヨーロッパでも有数のナイトライフを楽しめるスポットだ。もう少し大人の旅行者には、オスマン帝国の宮殿や正教会の寺院や、ニコラ・テスラ専門の博物館がおすすめ。さらに、2024年にはセントレジスがオープン予定となっており、ラグジュアリーホテルの新たな波がやってきそうだ。

しかし、この国の本当の素晴らしさは隠れた自然の宝庫と野生動物にある。息をのむような美しい山々に渓谷、川や滝があり、どの点をとっても日常の喧騒から離れるのに最適だ。

11.フランス、パリ

Photo: Getty Images

かつて「パリに行くのは、いつだっていいアイデア」と言い放ったのはオードリー・ヘプバーン。取り上げなくてもいいほどの人気都市であるが、2024年のオリンピック開催に向けて光の都はかつてないほど輝きを増している。セーヌ川での水泳、エッフェル塔のふもとでのビーチバレー、そしてパリ市庁舎の歴史的な広場からスタートするマラソンなど、パリオリンピックの公式サイトでは「首都での大会は、選手、観客、テレビ視聴者のために考え抜かれた圧倒的な光景を映し出します」と高らかに謳われている。

スポーツもファッショナブルに行うのがパリ。ラグジュアリーコングロマリットであるLVMHが、ファッションからビューティー、ライフスタイルのブランドを総動員してこの国際的なイベントをサポートするのも見所だ。オリンピックとパラリンピックのメダルをデザインするのはショーメ(CHAUMET)。歴史と伝統のある洋酒ブランドを保有するMHD モエ ヘネシー ディアジオがアルコールを提供する。また、公式ユニフォームも気になるところだ。

マレ地区のマーティン・ブルドニツキ設計ル・グラン・マザラン(Le Grand Mazarin)からベル・エポック調のシャトー・デ・フルール(Château des Fleurs)まで、ここ数カ月の間に新しいブティックホテルが数多く誕生していることも、訪れるべき理由の一つになるだろう。

12.スペイン、ガリシア州

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観光客が集まるのは太陽が降り注ぐバレアレス諸島やコスタ・ブラバの海岸沿いの町だが、イベリア半島の北西端にひっそりとたたずむガリシア州には、ため息が出るほど美しいビーチがいくつもある。長きにわたって穴場とされていたが、口コミでじわじわと広まり、注目を浴びる時がすぐそこに来ている。ここを訪れる著名人のなかには、コルベドという漁村にミニマルな修道院のような別荘を持つ建築家デイヴィッド・チッパーフィールドや、マドリードのファッション業界人たちがいる。

まずはカミーノ巡礼路の終点として知られるバロック建築の宝庫、サンティアゴ・デ・コンポステーラに立ち寄るついでに西海岸に足を伸ばし、リアス・バイシャスの黄金色の砂浜とクリスタルブルーの海を満喫したい。夜はルレ・エ・シャトー加盟のホテル・ペペ・ヴィエイラ(Hotel Pepe Vieira)で一泊を。ガリシアの定番料理を独創的にアレンジした料理が自慢のレストランは、ミシュラン2つ星を獲得している。しかし、本当の目玉はカリブ海のこちら側で最も美しいビーチがあるシエス諸島にある。自然保護区へフェリーで渡れるのは1日1,800人と制限されているため、事前予約を忘れないように。

13.テキサス州、フォートワース

Photo: Getty Images

カウボーイ発祥の地とも言われるテキサス州フォートワースが今注目されている理由は、ベラ・ハディッドのせいだけではない(昨年10月に、ここでプロのロデオ選手のアダン・バヌエロスとのデートが目撃されている)。2023年後半にウエスタンの雰囲気と本格的なアートコレクションが魅力の5つ星ホテル、ボウイハウス(Bowie House)がオープン。フォートワース・ストックヤードの世界的な博物館や西部劇の風情も相まって、豊かなと歴史と文化を感じられる町として人気を博している。

Text: Elise Taylor & Liam Hess Translation: Moe Ideishi Adaptation: Motoko Fujita
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