レジ袋 有料でもダメ 京都府亀岡市、全国初の条例めざす
「保津川下り」で知られる京都府亀岡市が、観光資源である桂川へのポイ捨て一掃などを狙い、市内の小売店で配られているプラスチック製レジ袋を禁止する条例の制定を目指している。有料、無料を問わず来店客への提供を禁ずる内容で、成立すれば全国初。2019年度中に市議会に条例案を提案し、20年夏にも施行したい考えだ。市は代わりにエコバッグや紙袋の利用を想定するが、市民や小売店の理解を得られるかは不透明だ。
目指す条例は市内のスーパーやコンビニなど小売店約760店舗にプラスチック製レジ袋の提供を禁ずる内容で、違反があれば指導・勧告のうえ、事業者名の公表も検討する。レジ袋の有料化やエコバッグの普及に取り組む自治体は多いが、条例でレジ袋を禁ずる事例は「聞いたことがない」(環境省)という。
制定に先立ち、19年度中にはレジ袋を有料化する。市は19年度予算案に、エコバッグの使用実態調査や市民向けの格安エコバッグの製作などで560万円を計上した。すでに西友やヤマダ電機など流通大手は有料化に大筋で同意。コンビニには月内に協力要請する。
全国に先駆けた取り組みの狙いは、桂川が大切な観光資源だからだ。保津川下りに加え、川に沿って亀岡市と京都市を結ぶトロッコ列車が走る。亀岡市を訪れる年間約30万人の観光客のうち外国人比率は3~5割。トロッコ列車の利用者は120万人で、その比率は6~7割とさらに高い。
近年は河川敷などでプラスチックのごみ袋や空のペットボトルが目立つ。ボランティアに頼ってきたごみ拾いも限界で、桂川孝裕市長は「これ以上放置すれば観光への悪影響は免れない」と危機感を募らせる。
亀岡市はもともと河川の環境保全に積極的だ。12年に内陸部の自治体で初めて「海ごみサミット」を開催、昨年は30年までにプラスチックごみをゼロにする目標を定めた。レジ袋禁止の条例化には「問題意識を高めてもらいたい」(桂川市長)との思いも込めた。
ただ、先行きは見通せていない。1月に行われた個人事業主向けの説明会では不安の声が相次いだ。「エコバッグに入らない大きな商品もあり、そのための紙製バッグを仕入れるのは負担が大きい」「急ぎすぎる」などの声が上がり、小売店の反応は総論賛成、各論反対の様相だ。
桂川の美化は周辺自治体の協力が不可欠だ。ただ、下流の京都市の門川大作市長は「(亀岡市に追随する考えは)今のところない」と静観する。「京都議定書」を採択した自治体として環境意識は高いものの、食料品に限った小売店だけでも市内に4000店以上あり、規制は容易ではない。国のレジ袋規制の動向を見きわめる思惑もある。
米国ではハワイやカリフォルニアでレジ袋が禁止され、海外では先例も多い。公共経済学に詳しい大阪商業大学の原田禎夫准教授は「世界基準では規制は正当」と指摘する。そのうえで条例の問題意識を共有するために「今後のロードマップとビジョンを明確に市民に示す必要がある」としている。(山本紗世)
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