米欧と中ロの対立激化、グローバル化の行方は
「経済教室」まとめ読み
米中対立、新型コロナウイルス禍に続くロシアのウクライナ侵攻により、世界の分断は一段とあらわになりました。米欧を中心とする民主主義国と中ロを中心とする権威主義国との対立が深まり、冷戦終結後に進んできたグローバル化は転機を迎えたとの見方もあります。この30年余り、世界経済の発展を支えてきたグローバル化の行方はどうなるのか、識者の論考を、「経済教室」からまとめました。
「米中のデカップリング(分断)は進行中であり、紛争リスクを高めかねない」との見方は単純すぎると指摘するのは、バージニア大学教授のデール・コープランド氏です。米中対立が深まっても、輸入依存度が高い中国は決して紛争を望んでいないとして、米国は過剰反応をすべきではなく、分断が世界大戦という悲劇を招いた1930年代の教訓に学ぶべきだと、警鐘を鳴らしています。
ウクライナ戦争が、「冷戦の終焉(しゅうえん)」に伴うグローバル化時代の低インフレに終わりを告げ、足元の高インフレをもたらしたと指摘するのは、経済産業研究所上席研究員の竹森俊平氏です。その一方で、ロシアのエネルギーにしても、中国の製品にしても、自由世界の生活に浸透しており、冷戦時代のような経済的な封じ込めは困難だとみています。
グローバル化の行方はどうなるのか、その手掛かりは過去の歴史に求めるしかないと指摘するのは、同志社大学教授の吉田徹氏です。1870年代に始まる第1次グローバル化では、負の効果を軽減するために社会政策が拡充されたとして、現代のグローバル化を持続可能なものにするには、より包括的な社会保障体制を構築していくことが欠かせないと強調しています。
経済学などを専門とする学者や有識者が内外の論文やデータを紹介しながら、学術的な視点から経済の動きをわかりやすく解説します。